自然災害時の労働基準法の取り扱いについて
コラム
2024/04/01
1.休業について
(1)国の特例措置の利用
大きな災害が起きたときは、国も労働者や企業を守るために特例措置を設けて対応することがあります。
たとえば、雇用調整助成金については東日本大震災やコロナ禍で大幅に支給要件が緩和されました。今回の能登半島地震においても特例措置として支給要件の緩和がおこなわれています。こうした特例措置を利用して休業中の賃金を支払う方法もあるでしょう。
また、離職していなくても雇用保険の失業手当が受けられる特例措置もあります。
2.災害を理由とした解雇
災害を理由とすれば無条件に解雇が認められるわけではありません。災害で事業場が被害を受け、操業不能に陥ったため解雇する場合などはいわゆる整理解雇に該当すると考えられますが、整理解雇については裁判例で「解雇の有用性」の判断にあたって次の4つの事項が考慮されています。
①人員削減の必要性
②解雇回避努力義務
③人員選定の合理性
④解雇手続きの妥当性
中でも②の「解雇回避努力義務」については、雇用調整助成金などを利用したかといった点も判断要素となります。
(1)解雇予告手当・解雇制限
「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」には例外的な取り扱いが認められています。解雇予告手当は必要なく、解雇制限期間であっても解雇できるというものです。
ただし、いずれの場合も所轄労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。
なお、自然災害を理由とするものすべてが「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」に該当するとは限りません。
3.賃金の支払い
労働基準法には、天災事変などの理由による賃金支払義務の免除に関する規定はありません。事業活動が停止し、再開の見込みがなく、賃金の支払いの見込みがないなど、一定の要件を満たす場合には、国が事業主に代わって未払賃金を立替払する「未払賃金立替払制度」を利用することができます。
また、先ほど紹介したように特例措置として雇用保険の失業手当が受けられる場合があります。
4.災害復旧のための残業、被災後の残業
災害などにより臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合は、36協定を締結していなくても労働基準監督署長の許可を受けて※必要な限度の範囲内で時間外・休日労働をさせることができます。※事態が急迫している場合は事後の届出可
被災地以外の事業者が、協力要請により被災地のライフライン復旧作業をおこなう場合も、状況によっては同様の取り扱いが認められます。
災害直後には十分な企業活動ができなかったため、復旧後に業務量が増加し、36協定で定めた延長時間を超えてしまいそう…という場合があるでしょう。
その場合でも36協定で定める範囲を超える時間外労働をさせることはできないので、どうしてもという場合は新たに36協定を締結し直し、届け出る必要があります。
再締結する場合、対象期間の起算日を変更することは原則として認められないため、前回の締結分を上書きする形式をとるのがよいでしょう。
また、36協定で延長できる労働時間については、労働基準法が定める上限を超えることができません。
上限とは、月45時間、年360時間で、特別条項を定めた場合でも年720時間以内、単月で100時間未満、2~6カ月平均で80時間以下となっています。
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