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社員が病気で休職
職場や取引先にどこまで話すべき?

コラム

2020/04/01

個人の健康情報は、「要配慮個人情報」として取り扱いに厳格なルールが定められています。業務上の必要性がある場合でも、本人の同意を得た上で、必要最小限の範囲の人にのみ話すべきでしょう。


■ 個人情報保護法

個人情報保護法では、病気に関する個人情報を「要配慮個人情報」と定め、原則として本人の同意を得ずに取得したり、第三者に提供することを禁止しています。
病歴などのセンシティブな情報を扱うときは、不当な差別や偏見、その他の不利益が生じないように、特に配慮が必要だと考えられているのです。


■ 安全配慮義務

個人情報保護法だけで考えれば、会社は社員の健康に関する情報を知らない方が良いし、誰にも知らせるべきではないということになってしまいますが、使用者には「安全配慮義務」があります。労働者の安全を確保するために必要な配慮をしなければならないのです。

安全配慮義務を果たすためには、体調の悪い社員に対し上司がきつい仕事をさせるようなことがないよう、社員個人の健康について情報を得て、保健指導を含む適切な就業上の措置を講じる必要があります。
つまり、労働者の健康を守る義務と、個人情報の保護とのバランスをどうとるのかが課題となります。


■ どこまで開示する必要があるか

社員が病気で休職することになった場合、職場の上司や同僚、取引先など、どこまで病気のことを開示すべきでしょうか。
やはり、「要配慮個人情報」であることを考えると、開示は必要最小限度に留めるべきと言えます。たとえば、直属の上司や仕事のフォローをお願いする同僚などです。その際ももちろん、本人の同意を得ておく必要があります。また、病名もどこまで伝える必要があるかなど、本人や産業医等とよく相談すべきでしょう。

では、取引先に対してはどうでしょうか。病気で休職することを知らせるべきでしょうか。これに関しては、次の裁判例が参考になります。

【裁判例】
高校教員がうつ病で休職。生徒に配布する学校だよりの「転出者」欄で病気休暇として掲載され、さらに1年数ヵ月後に学校のウェブサイトで もこの学校だよりが掲載されました。

判決では、「病気であることは通常は他人に知られたくない情報」であり、学校だよりやウェブサイトに掲載することは「不特定多数に明らかにする行為」。掲載する必要性が認められないとしてプライバシー侵害を認定し、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを命じました。

会社としては、病気で休職するため担当者が急に変わることなどを取引先に説明したいところですが、どうしても必要な場合のみに限定した方がよいでしょう。もちろんこの場合も、病気であることは本人の同意を得て伝えなければなりません。

また、病気だと言わなければ「休職していること」自体は広くアナウンスしてもよいのか?という疑問もわいてきますが、これについてもわざわざ広くアナウンスする必要はないと考えます。理由を詮索されたり「重い病気ではないか」などとウワサになる可能性があるからです。休職していることを伝える必要がある相手にだけ伝えるのがよいでしょう。


■ 緊急の必要がある場合はよい

以上のように、病気に関する個人情報の取り扱いは細心の注意が必要です。ただし、緊急に労働者の生命や健康を守る必要性がある場合には、本人の同意が得られなくても、労働者の健康情報を積極的に利用することが認められています。
しかし、本人の同意なしに個人の健康情報を伝えることができる場面は、人の生死に関わる場合などかなり限定されていると考えるべきです。



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