65歳までの義務と70歳までの努力義務
高年法に沿った高年齢者の労働契約
コラム
2021/08/01
今年4月より、改正高年齢者雇用安定法(以下「高年法」といいます)が施行され、70歳まで働く機会を確保する努力義務が企業に課せられています。65歳、70歳でも健康で働く意欲をもった高年齢者はたくさんいます。法律上の義務や努力義務を満たしながら、経験や知識をもった高年齢者に意欲的に働いてもらえる制度を導入できるよう、高年法について再確認しておきましょう。
1.勤務延長と再雇用制度のちがいは
継続雇用制度には「勤務延長」と「再雇用制度」があります。勤務延長は、定年退職手続きをせず、賃金体系や労働条件は定年前と基本的に同じままで雇用を延長します。
それに対して再雇用制度は、いったん定年退職して、新たな賃金体系・労働条件で雇用契約を結び直すものです。
継続雇用制度についてはこれまで子会社等の関連会社によるものが許されていましたが、70歳までの措置では関連会社に限らず他の事業主を紹介することにより実施するものも認められています。
2.再雇用制度で検討することは
■処遇の見直し役職を解かれ、契約社員や嘱託社員などに切り替えて再雇用することが多いため、それに応じて賃金を下げるのが一般的です。ただし、同一労働同一賃金の観点から著しい賃金格差には注意が必要です。
■勤務形態の見直し
高年齢者の体力や健康状態、本人の希望にあわせて勤務形態や勤務日数、時間を見直すことも必要でしょう。
3.継続雇用する人を選べる?
65歳までの措置は「義務」であるため、希望者全員が定年後も雇用されるような制度でなければなりません。一方、70歳までは「努力義務」であるため、対象者の基準や継続雇用しない事由を定めておくことが可能です。
ただし、基準を設ける場合でも、公序良俗に反するものは認められません。「会社が必要と認めた者に限る」「上司の推薦がある者に限る」などの基準も適切ではありません。企業や上司の主観的な選択ではなく、基準に該当するか否かを労働者が客観的に予見できるものにするべきです。
なお、対象者の基準を設ける場合は、過半数組合等の同意を得ることが望ましいとされています。
4.無期転換ルールは適用される?
同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合は、労働者本人の申し込みにより無期労働契約に切り替わるルール(無期転換ルール)があります。定年後の継続雇用では、1年契約などを更新していくやり方が一般的ですが、継続雇用の高年齢者については例外措置が設けられており、通算5年を超えても無期転換申込権が発生しないことになっています。
ただし、例外措置が適用されるのは、事前に計画を作成し、都道府県労働局長の認定(第二種計画認定)を受けた事業主に限られます。
なお、他社で働いていた高年齢者を60歳以降に新たに雇用した場合は、この例外措置にあてはまりません。
5.業務委託契約を途中で解除することはできない?
「70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」は努力義務であるため、業務委託契約等を更新しない事由を定めることは可能です。業務委託契約や社会貢献事業など「創業支援等措置」を講じる場合は計画を作成する必要があると説明しましたが、この計画の中の「契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む)」に更新しない事由を記載しておきます。
なお、法律の趣旨や公序良俗に反する事由は認められません。
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